乾いた時代だと思わんか?

5月末に第15回国際花粉学会議/第11回国際古植物学会議があって,チェコのプラハに行ってきました.久しぶりの対面の国際学会でしたが,夜遅くまで古植物話で盛り上がったりして,改めて人のつながりの重要さを感じました.

チェコ古植物学の始祖Kaspar Maria von Sternberg

学会の一環で,石炭紀とペルム紀の植物化石を見るというツアーがあって,フラデツ・クラーロヴェー(Hradec Králové)州あたりに行きました.もともとこのツアーは1泊2日の企画だったのですが,参加希望者が少なく,日帰りツアーに急遽変更されました.そのため,石炭紀/ペルム紀境界付近の地層を中心に見るという企画になっていました.

旅程は短くなってしまいましたが,日本では古生代の植物化石が少ないので,参加するのを楽しみにしていました.でも当日は稀に見る土砂降り….しかし「雨なんて気のせい」と自分に言い聞かせ,いざ出発.

まず,ヴルフラビー(Vrchlabí)近郊の前期ペルム紀の化石産地.どうしても化石を採りたいので,土砂降りの中,掘りまくります.同行者から「あなただけ,やけに熱心ね.この時代のご専門?」と聞かれましたが,そこは笑顔で「ただ化石が好きなだけっすよ」と答えます.同行者の皆さんは,みんな傘を差していて,ハンマーを振っていないようでした.そうだよね,諸外国の皆さんにとっては,古生代の化石なんて珍しくないもんね….

前期ペルム紀の化石がとれる露頭.赤い.

まあ採れるんだけど,何か渋いんですわ….よく考えれば当たり前.石炭紀/ペルム紀境界は乾燥化が進行した頃で,そもそも植物化石はかなり少なめです.そこでこのツアーの趣旨をようやく理解します.「石炭紀/ペルム紀境界は植物化石少ないね.植物は乾燥に苦しんどったんやなあ」ってことを肌身で知るための酔狂な企画だったんです.派手なリンボクとか採りたかった….

Odontopteris(左)とPecopteris(右) .ともにシダ種子類(裸子植物)の葉.

次に行ったキイェ(Kyje)はもっと渋かった.これまでに見つかった植物化石はオドントプテリス(裸子植物)の破片のみという超コワモテの産地です.線路脇の露頭で真っ赤な砂泥互層を見せられ,「乾いとったのがわかるやろ?」と説明され(赤色の地層は乾燥の指標です),挙句「乾裂」を見せられます.

スタンドバイミーですな(若い人はわからないかも).電車は夕方まで来ないらしい
泥が乾燥してできた割れ目(乾裂)

その後,ペツカ(Pecka)という街に古城を見に行きました.なぜ城かというと,城が後期石炭紀の砂岩の上に建っていて,城内に珪化木が転がっているからです.珪化木も見ましたが,それよりも地下に拷問部屋があったのが,衝撃的すぎました.しかも拷問部屋の横はワイン蔵.天国と地獄が隣り合わせです.

ペツカ城.石垣の下に砂岩の露頭が見える

ペツカの街にはかつてビール醸造所が数軒あり,パブも多数あってかなり賑わっていたそうです.城内にはその頃の道具類が展示してありましたが,中でもすごかったのが「酔っ払いを運ぶカゴ」です.パブで酔い潰れると,これでお家まで運んでくれたのだそうです.うらやましい文化です.さすが,水よりビールが安いと言われるチェコです.

素敵なカゴ.チェコの奥深さを感じます

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