美濃加茂での調査

美濃加茂市に分布する瑞浪層群の調査に行ってきました.瑞浪層群の層序(地層の重なり方)と層厚(地層の厚さ)を整理するのが主な目的です.美濃加茂市の木曽川沿いには,瑞浪層群中村層が露出していて,化石林が発見されています(オベチェの森を参照).化石林は1つの地層の面に発達していたことがわかっていますが,それがどの範囲まで広がっていたのか確かめようと思ったのも目的です.

本州は暖かいだろうと思っていたら,足は水に浸かってるし,日影はめちゃめちゃ寒かった… 特に,朝は雪が降っていました.手が震えて,ノートに字や図が上手く書けませんでした.まあ,人はこういう荒業に耐えて大人になるんでしょうな.おっさんですが.

墨入れ(ペン書き)前の鉛筆書きの字が寒さで歪んでいる.平行ラミナなのに,線が水平に引けていない.

中村層は150 m弱の層厚があると言われています.しかし,ざっと調査してみて,「実際はもっと薄いのではないか?」というのが私の感想です.中村層は,ほぼ水平な傾斜であるため,崖の高さ分(=地表の高低差分)だけ,地表に地層が露出する可能性があります.ところが,中村層の分布域では,土地が平坦で,場所ごとの標高差が小さく,それほど大きな崖がありません.

地層が水平に近い傾斜だと,崖に現れる地層の厚さは薄くなる.左の例では黄色2層+青3層分の層厚が観察できるのに対し,右の例では黄色7層分+青6層分ちょっとの層厚が観察できる.
この地域の地層の傾斜は,ほぼ水平.つまり崖の高さ分だけの層厚が観察できる.竹の棒(スケール)は2.25 m .

地層が水平で露頭の高さがない場合は,地層の広がりを大局的に捉えないと,層厚や層序の解釈を誤ります.例えば木曽川沿いでは,化石林を含む層が何層もあると考えられていました.しかし,私たちは「地層が水平である」ことを意識して同じ地層面を追跡し,「木曽川右岸で化石株が見られるは1層だけである」ことを明らかにしました(オベチェの森を参照).同じように,地層面がある標高を意識して層序を見直してみると,木曽川沿いではせいぜい10数メートルの層厚しか観察できなさそうです.

木曽川沿いの地層を大局的に眺めた写真.地層の傾斜はほぼ水平で,ゆるやかにたわむ(この場合は背斜).星印を付けた砂岩層は同じ層準であることに注意.

今後,分布域全体での層厚を見積もるためには,離れた露頭どうしを対比するのに必要な鍵層を見つけなければなりません.中村層は凝灰岩層を多く含むので,凝灰岩を細かく分類していけば,そのうち鍵層が見つかるものと思います.

ちなみに,木曽川右岸で化石林を含む件の1層は,左岸まで広がっていて,そこには化石株が見られました.また,化石林公園よりも上流側にも化石林が広がっていそうです.


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