大船渡市の周辺には,シルル紀以降の古生代の堆積物が広く分布しています.私たちは最近,これらの堆積物から植物化石を探しています.1970-1980年代の地質調査の記録を読むと,炭質物・植物片という言葉が出てくるためです.炭質物という“無機質”な響きから伺えるように,調査した研究者には,それらが「植物化石だ!」とは映らなかったようです.しかし,私は「炭質物を植物化石に変える」のが古植物学者の仕事なのだと思っています.
私たちは手始めに前期デボン紀の堆積物を調べて見ましたが,胞子化石が含まれていることがわかりました(詳細は別稿で).そこで今回は石炭紀の堆積物の下見に行ってきました(あくまで下見).大根みたいなサンゴが黒い泥質の石灰岩の中に入っていました.石が黒いのは有機物が豊富に含まれるからです.もし堆積した場所の海辺に寝そべったのなら,真っ黒になりそうです.「白い砂,青い海」みたいな,パリピなサンゴ礁とは随分イメージが違います.そもそも「礁」になっていなかったかもしれません.
凝灰岩の中に三葉虫が入っていましたが,火山島のような環境で堆積した地層なのかもしれません.石灰岩は層理がはっきりとしていて,なんらかの堆積サイクルがあったことを想起させます.石炭紀は気候が目まぐるしく変化した時代なので,そんな全球的な気候変化を反映している気もして,何かドキドキしました.それが加齢による動悸でないことを祈るばかり.